ブレグジットとスコットランド独立問題についての展望

 

 

最近の国際情勢に関するニュースといえばイランとアメリカの対立が目立っていますね。

 

しかし、その裏ではブレグジットというビッグニュースも隠れています。

 

どうやらイギリスのEU離脱は確定路線になったようですが、その後はスコットランドの独立問題が再燃するとも言われており、今年の注目ニュースであることは間違いありません。

 

そして今月14日にはスコットランドの独立に関する住民投票の実施をイギリス政府が正式に拒否し、すでに大きな話題になりつつあります。

 

この記事ではスコットランドが独立を求める背景と、住民投票が実施された場合の展望を考察してみたいと思います。

f:id:kenzou_self_study:20200118155811p:plain

独立を求める背景

スコットランド王国は建国以来独立国家でしたが、1707年にイングランドとの合同により独立国家としてのスコットランドは消滅しました。

 

この合同の理由は、アメリカ大陸への進出に失敗したスコットランドにとって、イングランドとの合同によって植民地との貿易の機会を得ることが必要だったためです。

 

しかし、スコットランド人としてのアイデンティティが失われることはなく、イギリスから独立したいという思いは残り続けていました。

 

 

こうした背景の中、1960年代の北海油田の発掘は独立へ向けての経済的基盤が固まったという見方をスコットランド内で強めました。

 

その後1999年にスコットランド議会が300年ぶりに開かれ、スコットランド国民党(SNP)が第一党となることで独立への動きは具体化していきます。

 

2011年にスコットランド国民党がスコットランド議会で過半数を獲得すると、翌年には英国からの独立を問う住民投票を14年9月に行うと発表し、イギリスのキャメロン首相もこれに同意しました。

 

 

住民投票は発表通り行われ、賛成約45%、反対55%となり、この時は独立は実現しませんでした。

 

投票率は85%に達し、女性より男性、労働者階層、55歳以下の年齢巣が独立賛成を支持したようです。

 

また、経済的に低迷している地域を多く抱える4つの自治体では賛成多数でした。

 

f:id:kenzou_self_study:20200118155927j:plain

 

 

独立の争点は何だったのか

スコットランド独立の是非における争点は通貨政策、北海油田から得られる税収の見通し、EU加盟についての問題でした。

 

とりわけ重要だったのがEUへの加盟であり、賛成派は独立後に円滑に加盟が行われると主張しましたが、反対派は一から加盟申請を行うことは多くの困難を伴うとして反対しました。

 

これは、EUに加盟するためにはコペンハーゲン基準という政治、経済、法律における一定の基準を満たす必要があるためです。

 

独立反対派は、スコットランド単体ではこの基準を満たすことができず、EUに加盟することは困難であると判断したようです。

 

また、独立は経済面にも大きな不安がありました。

イギリスから独立することはEUからの離脱を意味したからです。

 

EUから離脱すればスコットランドに拠点を置く企業や金融機関は免許などの関係でEU内でのビジネスが不可能になり、他のEU地域へ拠点を移すことになります。

 

そうすると、スコットランド内では雇用減少、失業者増加、景気減退が起きるというリスクがありました。

 

 


住民投票の後もスコットランド国民党は勢いを増し、各種選挙で着実に議席を獲得しています。

 

また、世論調査によるとその後も独立賛成派は約40%の水準を維持し続けていたようです。

 

 

2016年6月にはイギリスのEU離脱を問う国民投票が行われ、イギリス全体では離脱を求める声が多数派となったのに対し、スコットランドでは離脱派が約38%、残留派が約62%と、残留派が多数を占めました。

 

スコットランド単独でのEU加盟が可能かという点が独立の争点になったように、スコットランドでは多くの人がEU加盟のメリットを重視しているようです。

 

そのため、イギリスのEU離脱の動きを受けて、スコットランドでは再び独立を求める声が高まっているのです。

 

f:id:kenzou_self_study:20200118155538j:plain

 

 

独立投票の展望

スコットランド独立についての住民投票では、EUに残留するメリットを考慮して反対票を投じた人々が多く存在したのは間違いありません。

 

これは2016年のイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票において、スコットランドでは62%が残留を選んだことから裏付けられます。

 

そのため、イギリスがEUから離脱するのであれば、スコットランドの独立問題に関して反対票を入れる理由がなくなるという層が独立賛成派に流れる可能性が高いです。

 

もちろん、独立賛成票を投じた人々の中にはEUから離脱したいから賛成票を投じた層もいるでしょうから、イギリスがEUから離脱することでイギリスから得られる利得を維持したままEU離脱ができるようになるため、そういった人々が独立反対派に回る可能性もあります。

 

しかし、イギリスのEU離脱を巡る国民投票でスコットランドのおよそ60%の人々が離脱に反対したことを考えると、独立を決める次の住民投票ではEUへの加盟を求めて多くの人が賛成票を投じるのではないでしょうか。

 

 

もちろん、スコットランドの独立問題では北海油田の利権など、他にも重要な争点がいくつかあります。

 

しかし、最大のキーワードとなるのは「EUへの加盟」で間違いないでしょう。

 

独立賛成派はブレグジットによってEU離脱のデメリットについて市民の理解が深まっているこの時期に、あえて違う争点で戦おうとは思わないはずだからです。

f:id:kenzou_self_study:20200118160132j:plain

ボリス・ジョンソン英首相とニコラ・スタージョンSNP党首

いずれにせよ、そもそもイギリス政府が認めなければ住民投票はできませんから、独立投票が行われるという事態は、すでに独立賛成派が大多数であることが明らかになった時かもしれません。

 

今後も注目していきたいと思います。