即レス=有能という風潮
即レスが有能の証になったのはいつからだろうか。
僕の記憶が正しければ、ホリエモンが「多動力」という本で「有能なビジネスマンほど返信が早い」というようなことを書いたのがきっかけだった気がする。
それ以来、「有能な人ほど返信が早い」というエピソードはTwitterでも多数見られるようになり、最近では即レスが有能の条件として定着しつつあるように思う。
ちょっと前までは意識の高い人たちがネット上で騒いでいるだけだと思っていたが、最近になって僕の周りにもやたらと返信が早い人が増えてきた。
4月から社会人になる人がビジネスマナーや仕事の仕方について調べるようになった結果、即レスが有能という評価につながることを知ったのだろうか。
いつラインを送っても5分以内に返信が返ってきて、もちろんこちらとしては用が早く済むので助かる。
しかし、僕自身もそいつとのラインでは即レスをしなくてはいけないんだろうかという、無言のプレッシャーも感じるのだ。
そして時には、こちらの返信が遅い(と言ってもせいぜい2,3時間ほどだが)と「早めに頼む」みたいな追撃メッセージが送られてきたこともあった。
それも遊びに行くための日程調整のような、全く急を要する内容でもないのにだ。
いったいみんな、何をそんなに急いでいるんだい?
即レスを煽る最近の風潮を見ていると、僕は心の底からそう思う。
もちろん社会人なら仕方がない部分もある。
マネジメント的な役割をもつ人なら、自分からの連絡や許可がないと他の人が仕事を進められないから早く返信する必要があるだろう。
それ以外の人でも、仕事に関する連絡はこまめにチェックするのが当然だ。
しかし、プライベートの連絡まで即レスを求めるのはいかがなものだろうか。
ましてただの大学生が遊びやバイトの要件で即レスにこだわるのは、意識が高いどころかもはや面倒くさいだけだ。
それなのに、いったいなぜこんなにも多くの人が即レスにこだわるようになったのだろうか?
即レスで得られる満足感
一つ考えられる理由としては、即レスによって「自分は有能である」という満足感が得られることだろう。
即レス自体はそれほど難しいことではない。
スマホを肌身離さず持ち歩き、通知をONにしていれば誰でも簡単にできることだ。
そんな誰でも簡単にできることを、「有能なビジネスマンの条件である」と著名人やインフルエンサーが言うようになった。
誰だって自分が有能だと信じたい。
あるいは、無能だと思われたくない。
即レスをするだけで有能と思われたり、無能のレッテルを貼られるのが防げたりするなら、スマホの設定を変えて即レスをしたくなるのが人間の心理だと思う。
特に意識の高い大学生はこの心理に陥りやすいのではないだろうか?
会社で仕事をしていない大学生が、「自分は有能である」と実感できる場面はほとんどない。
勉強の成績を有能の証と考える学生はこのご時世には絶滅危惧種だろうし、バイトのような単純作業をどれだけ正確にこなしても自分を「有能」とは思わないだろう。
そんな中で、即レスはダラダラと生活を送る大半の大学生と簡単に差別化できる行動で、ネットで有名な「できるビジネスマン」からの評価も高い。
意識の高い大学生が求める「周囲との差別化」と「尊敬できる社会人からの評価」が一度に手に入るのだ。
少なくとも、自分の中では手に入ったと錯覚できる。
これが意識の高い大学生が即レスにこだわる理由なのではないだろうか?
あえて通知を切ってみよう
ここまで即レスをディスるような内容を書いてきたが、僕自身は即レスは嫌いじゃない。
即レスは仕事や作業をスムーズに進めるのに役立つし、実際に即レスによってそれを実感した経験はたくさんある。
だから今でもスマホを開くたびにLINEをチェックすることは習慣にしているし、社会人になってからもできるだけ早く返信することは心がけていこうと思っている。
でも、即レスを煽られるこんな時代だからこそ、あえて通知を切ることを提案したい。
通知を切って、メッセージの通知に集中を妨げられることなく仕事や作業を進めることのメリットを忘れてはいけないと思う。
仕事の連絡をチェックするのは30分~1時間に1回程度にしたり、作業がひと段落したときに限定したりして、自分の作業に最大の集中力を発揮しよう。
僕たちはホリエモンじゃないんだ。
会社員なら少なくとも30歳くらいまではマネジメントよりも手を動かすことが仕事の中心だろう。
自分が返信しなければ他の人の仕事が進まないという状況じゃないなら、通知に集中を乱されることなく自分のやるべきことに最高の集中を向けるべきだと思う。
ネットで情報発信するビジネスの成功者たちが即レスを当たり前として扱うのは、自分で手を動かす段階を卒業してマネジメントを主な仕事としているからだ。
そして彼らが「優秀なビジネスマン」と言うときの「ビジネスマン」とは、末端で手を動かしている若手社員ではなく、経営者や管理職を指していると考えよう。
経営者でも管理職でもない若手社員が即レスだけまねしても、成長も結果もついてこないだろう。
ネット上で目にする意識の高いルールに踊らされることなく、自分のやるべきことに集中して生きていきたいと思う。