『坂道のアポロン』は小玉ユキの原作漫画を実写化した2018年公開の映画です。
<原作漫画はこちら>
知念侑李、中川大志、小松菜奈、ディーン・フジオカ、真野恵里菜といった豪華キャストが出演しています。
ストーリー
医師として病院に勤める西見薫(知念侑李)は、診察に追われる忙しい毎日を送っていた。
ある日、入院している子供たちにせがまれて院内に置いてあるピアノを演奏すると、高校時代の思い出が甦ってくる。
10年前、父を亡くして九州の親戚の家に預けられた薫は、冷たい対応の親戚家族になじめずにいた。
「絶対に医学部に合格しなさい」と親せきからプレッシャーをかけられる日々の中で、家に置いてあるピアノを弾いている時間だけが、薫にとって心の平穏が訪れるひとときだった。
そんな彼が転校先の高校で出会ったのは、学校中から恐れられる不良の千太郎(中川大志)と、その幼馴染である律子(小松菜奈)だった。
最初は粗暴な千太郎にうんざりする薫だったが、レコード屋を営む律子の家の地下室で荒々しく、しかし楽しそうにドラムを演奏する千太郎を見て、徐々に千太郎に惹かれていくとともにジャズに魅了されていく。
その日を境に、薫はピアノで、千太郎はドラムでセッションをし、律子と3人で過ごす楽しい日々が始まった。
やがて薫は律子に恋心を抱くようになるが、律子の思いは千太郎にあることに気づいてしまう。
千太郎は律子の思いに全く気付いておらず、海で出会った美しい女性、百合香に恋心を抱く。
しかし、百合香は千太郎が「じゅんにい」と呼んで慕っている桂木淳一(ディーン・フジオカ)に思いを寄せているのだった。
複雑に交差する恋心の一方で、薫と千太郎は友情を深めていく。
だが、そんな幸せな青春も長くは続かなかない。
ある事件をきっかけに、千太郎は薫と律子の前から姿を消してしまうのだ。
そして10年後....
映画の見どころ、感想
映画を観た後の率直な感想は、
「なんだこの清々しさは...」
でした。
あまりの清々しさに胸焼けしました。
いや、本当に清々しい映画で、完全にネタバレなんですけど、
登場人物、誰も死にません。
これ結構すごいことだと思います。
完全に偏見なんですけど、邦画といえば登場人物が誰かしら死ぬじゃないですか?
そうやって安易に泣かせようとしてくるものだと思うんです、邦画って。
でもこの映画はそういうの一切なくて、なんというか、ストレートと言うか、純粋と言うか。
いや、でもやっぱり、清々しいという言葉がふさわしいと思うんです。
もちろん、ストーリーに書いた通り登場人物たちの恋心が複雑に交差していて、そのあたりのもどかしさはあるんですが、でもやっぱり薫と千太郎の友情が離れることはなくて、
これもネタバレなんですけど、
一瞬ケンカするんですよ、こいつら。
でもその後お互いに向き合うことから逃げず、ジャズの力を借りつつも、自分たちの素直さで関係を修復していくんです。
これってなかなかできないですよね?
僕たちって、大人って、気にいらない相手がいればすぐに視界から消そうとするじゃないですか?
大学生だったら連絡を取らなくなって、授業を一緒にとることもなくなって、教室でも離れたところに座って。
社会人で職場が一緒で離れられないときは、立場が上の方が小細工して相手をどこかに飛ばしたりして、とにかく、とにかく視界から見えなくしようとするのが大人じゃないですか?
見えなくして、距離をとって、忘れるのが大人になるってことじゃないですか?
仲直りとか暑苦しいし、くさいって笑って、年をとればとるほど人間関係に本気で向き合うことってなくなっていくと思うんです。
でも、主人公たちは違うんですよね。
このままじゃダメだって、自分の思いをぶつけて、お互いに素直になって、認め合いたいっていう気持ちをそのままぶつけ合うんです。
田舎の高校という閉ざされた空間であることも理由だとは思いますが、忘れつつある大切なことを思い出させてくれる映画だったと思います。
現代人はほんとに人間関係がドライで、でもそのドライさが楽と言うか、主人公たちの付き合い方の方が断然しんどいと思うんです。
でも、だからこそ映画ではそういうの観たいと思うんです。
実際にはしんどくて無理だけど、本当は人間関係の温かさって、しんどさが付きまとうもので、そういうの映画を観ることで感じたいんだと思うんです。
『坂道のアポロン』はまさにうってつけの映画でした。
Amazonプライムで無料で観られるので、チェックしてみてください。