本多静六『私の財産告白』に学ぶ資産の築き方

本多静六とは

本多静六は1866年に埼玉県で生まれ、林学博士、造園家、株式投資家として知られている。

裕福な農家の生まれだったが、9歳の時に父親が急死すると同時に多額の借金が家に舞い込み、それまでとは打って変わって苦しい生活をするようになった。

苦学の末に現在の東京大学農学部に当たる東京農林学校を首席で卒業し、林学を学ぶためにドイツに留学した後は帰国して母校の助教授を経て教授になった人だ。

 

そんな彼は勤倹貯蓄と分散投資によって一代で財を成し、さらに370冊を超える著作を残したことで知られている。

彼の貯蓄や投資のメソッド、大学教授を務めながら膨大な著作を執筆した秘訣をまとめた著書が「私の財産告白」だ。

本多式貯金術

本多の貯蓄方法はいたってシンプルだ。

それは、

  • 給与の4分の1を天引きして貯蓄に回す
  • ボーナスは全額貯蓄に回す
  • 書籍の執筆などの副業収入は全額貯蓄に回す
  • 倹約に努める

というだけのものだ。

4分の1貯金法

本多は、給料収入の4分の1を貯金し、さらにボーナスや副業収入は全額を貯金していた。式に表すと、

貯金=給料収入×1/4 +(副業収入 + ボーナス)×10/10

となる。

どれだけ生活が苦しかろうと、どれだけほしいものがあろうと、給料は4分の1を絶対に天引きして貯金に回すのである。

 

税金のことを考慮に入れないで計算するが、年収400万円の人は300万円、年収600万円のひとは450万円で生活するということだ。

これは多くの人にとって大きな苦痛を伴う貯金方法だ。

 

一般的に収入が増えると人は生活水準を上げずにはいられないし、一度上げた生活水準は容易には下げられない。

 

小学生の時は月に2000円のお小遣いで駄菓子を買っていれば満足できたが、高校生や大学生でバイトを始めて自由に使えるお金が増えてからは、カラオケやらディズニーランドやらとお金のかかる遊びが増えたはずだ。

社会人になれば学生時代の数倍の収入を手にするが、それに伴って遊びの単価も増え、それまで知らなかった刺激に触れて誘惑も多いはずだ。

 

しかし、お金持ちに本当になりたいのであればこうした誘惑をはねのけて節約に励まなくてはならないということだ。

倹約の哲学

本多は何もケチになれと言っているのではない。見栄を捨てて浪費をやめるべきであるといっているのだ。

 

この世の浪費のほとんどは見栄に起因するものである。

 

収入の高さを誇りたいために必要以上に高額な時計を身に着けたり、女の子の前でかっこつけたいために高級車を買ったり。

そうしたつまらない見栄のためにお金を浪費してはいけないと本多は説いているのだ。

 

現代では、自分の生活がいかに充実しているかを見せたいためにSNSで話題のお店や観光スポットに行き、その様子を投稿することもまた浪費と言えるかもしれない。

 

ユーチューバーやインフルエンサーなど、圧倒的にキラキラにした生活を私たちは日々見せつけられ、憧れを抱いている。いや、憧れさせられているのだ

彼らに煽られるままに見栄を張ろうとして浪費するのではなく、自分が本当に価値を見出せるものにお金を使えばいい。

 

倹約は必要なものを削ることではなく、無駄を省くことなのだ。

本多式投資術

本多式資産形成術のステップ2は貯蓄したお金の運用だ。

 

本多は、貯蓄でためたお金を投資に回すことでお金は雪だるま式に増えていき、資産を築けると説く。むしろ、4分の1貯蓄術でお金を貯めるだけでは大した資産にはならないというのだ。

現代に置き換えて考えれば、サラリーマンの平均生涯年収である2億~3億の4分の1は5000~7500万円であり、老後の備えとしては莫大な資産と言える。

 

しかし、年老いて活力を失った後にできる贅沢には限りがあるし、エネルギーに満ちあふれた若い時期に我慢に我慢を重ねた末の額と考えるとそれほど喜べる資産ではない。

 

本多は、貯蓄を投資に回すことでまだ若いうちから資産を築き、会社の収入に依存せずに生きていける状態=経済的独立を目指せると説く。

では彼はどのようをな戦略で投資をしたのか。それは、

「二割利食い」「十割益半分手放し」という2つの戦術を用いた投資だった。

二割利食い

株で利益が出ているとき、もっと株価が上がると期待してしまう心理はよく理解できる。

ギャンブルでもそうだが、勝っているときに中断するというのは負けているときに中断するよりも難しいことだ。

 

だからこそ、株式投資ではある一定の利益が出た時点で機械的に売り、利益を確定させることが大切になる。

 

そのラインが本多の場合は「二割」であり、二割の利益が出た時点で銀行預金(当時の利子は4%ほど)よりも利回りがはるかにいいということで満足したのだ。

これが「二割利食い」である。

 

もっとも本多が実際に行ったのは先物取引であったため少し事情は変わるが、ある一定の基準を決めて機械的に売買することは投資では最も理想的なやり方であるとされている。

 

もっと上がるだろう、ここから上がるだろうという感情に流されるのではなく、理性的な運用をするべきということだろう。

十割益半分手放し

株を買って、株価が2倍以上になったとする。

 

その時、株価がこれからも順調に上昇していくだろうと楽観視してそのままにしておくと、突然株価が急落して元本割れが起こる可能性がある。

 

本多はこうした事態を避けるために、株価が二倍になった時点、すなわち十割の利益が出た時点で株を半分売ったのだ。

すると元本と同じ額が現金化され、残った株が順調に上昇すれば利益が増えていくし、下落したとしても損をすることはないのである。

 

これが十割益半分手放しである。

 

本多は投資は堅実に行うべきものであり、決して「投機」になってはならないと説く。

多くの人は株価が倍になれば大喜してそのまま株を持ち続けるが、冷静に元本を現金化することで確実に損失を防ぐべしということだろう。

本多式資産形成のゴールは仕事への熱中

ここまでで本多式資産形成術の具体的な話を進めてきたが、本多はツイッター広告でよく見かけるような、「投資で儲けて仕事をやめよう!」みたいな人ではない。

 

本多は倹約と堅実な投資で資産を築くことで経済的な独立を目指したが、仕事を楽しむことこそが大切であると説く。

投資だけで資産を築くのは多くの人にとって極めて困難かつハイリスクであり、本多式資産形成術はそこを目指しているわけではない。あくまでも資産形成は経済的独立のためであり、最大の収入源は仕事なのだ。

 

そして人はお金のためだけに働くのには限界がある。

いくら年収を積まれても、仕事がつまらないと感じるときは人生の幸福度は低いだろう。

だからこそ、本業に熱中することをまずは目指せと本多は言う。

 

そしてその上で本業に役立つ副業をすれば、仕事も楽しめるし収入も増え、さらにそれを投資に回すことで幸福度を高めるとともに資産を増やすことができるのだ。

このサイクルを作り上げることが本多式資産形成のゴールなのだ。

 

本多は大学教授を務める傍ら、日々自分で決めたページ数だけ書籍の執筆を進めていた。こうした積み重ねの結果、生涯で370を超える著作を生み出したのだ。

この副業は本業と独立したものではなく、本業である大学教授の仕事役立つものだったという。

 

副業を成功させて独立を目指すというのが最近の流行りのようだが、まずは本業に精を出し、そこで得られた能力を副業に還元したり、本業に役立ちそうなスキルが身につく副業を探したりするべきということだろう。

まとめ

「私の財産告白」で語られていることは、何一つ特別なことがない。

倹約してお金をため、堅実な投資で資産を増やす。

仕事に熱中し、本業の役に立つ副業をする。

当たり前のことでしかないが、やはりその当たり前を堅実にこなせる人が最後は勝つということだろう。

 

ネットの世界では、「会社が嫌なら投資や転職や副業をしよう!」といたずらに煽る人がいるし、それに賛同する人もたくさんいる。

しかし、彼らの中のほとんどの人の心の底にあるのは、「楽をして生きたい」という思いだろう。

「私の財産告白」は、次の一文で締めくくられている。

人生即努力、努力即幸福、これが私の体験社会学の最終結論である。

人生とは努力することであり、努力が幸福をもたらすのである。

理不尽で違法な待遇に耐える必要はないが、努力することを嫌がって投資や副業に逃げようとするのは間違いであると、最近のネットの様子を本多がみたら言うのではないだろうか。