コロナウイルスは日本の世代間闘争を表面化させるかもしれない

 

 

新型コロナウイルスが世界中で蔓延している。
 

中国を発生源に韓国や日本に飛び火し、「アジアの疫病」と思われていた新型ウイルスは、油断しきっていた欧米社会にまで牙をむいた。

 

今となってはコロナウイルスの犠牲者数は欧米諸国がアジアを上回り、3月23日の朝の時点でイタリアは5476人、スペインは1720人、フランスは674人、アメリカでは390人が亡くなっている。

 

 

 

欧米でのコロナウイルス拡大の情報をTwitterで調べていたところ、こんなツイートを見つけた。

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twitterと連携がうまくいかないため画像で掲載

「Boomer」とは1946年~64年生まれの世代を指し、日本でいえば団塊の世代の最初の方の人たちがこれに当たる。

 

若者をバカにしたり、古い考え方を押し付けたりする高齢者を侮蔑的に呼ぶ際に用いられる言葉だそうだ。

 

「#BoomerRemover」とは、感染者の中でも特に高齢者の致死率が高いコロナウイルスのことを、「高齢者を社会から排除してくれるもの」としてポジティブにとらえる若者の心理を示している。

 

日本風に言えば、「老害除去剤」といったところだろうか。

 

ではなぜコロナウイルスの拡大が世代間闘争を引き起こそうとしているのか?

 

 

 

コロナウイルスは高齢者の致死率が高い一方で、若年層では感染しても発症しないケースもあると指摘されている。

 

そのせいで、実際に発症している人数が多い高齢者と、感染に気付かずに出歩く若年層のどちらが感染を拡大させているかという水掛け論が繰り広げられ、世代間闘争に発展しかけているというのだ。

 

しかし、世代間闘争はもちろんコロナウイルスの感染拡大だけが原因ではない。

 

 

イタリアの世代間闘争の原因

欧州で最も被害が大きいイタリアの例を取り上げてみる。

 

イタリアでは日本と同様に少子高齢化が進行しており、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が23%を超えている一方で、合計特殊出生率は日本の1.42と比べても低い1.3となっている。

 

今後、日本と同様に社会保障費は膨らむ一方でその担い手となる若年層の数は減り続けることが予想され、年金の受給年齢を67歳に引き上げるなどの対策が議論されてきた。

 

ところが、2018年に発足したコンテ政権は「クオータ100」と呼ばれる制度を作り、年金受給年齢を62歳まで引き下げたのだ。

 

クオータ100は年齢と勤続年数を足して100以上になる人(ただし62歳以上が対象)が直ちに年金を受給できるようにする制度で、11万人にも及ぶ大量の離職者が出たことで公務員を中心に人手不足の事態を招いた。

 

社会保障費を削減していかなくてはならないのに、あろうことか年金の受給年齢を下げるというバラマキ政策を行ったのだ。

 

イタリアの政治事情に詳しくはないが、高齢化が進むと選挙のために高齢者に金をばらまくのはどこの国の政治家も同じということだろうか。

 

 

 

コンテ政権はベーシックインカムの導入も同時に行ったが、イタリアにそれだけの社会保障を維持できる経済力がないことは誰の目にも明らかで、長くは続かないだろう。

 

なんせ少し前まで年金をどう切り詰めるかという議論をしていたくらいなのだから。

 

そして一度引き下げた受給年齢を引き上げるのは世代間の不公平が大きすぎるため、まず犠牲になるのはベーシックインカムの方だろう。

 

ベーシックインカムを削っても高齢者が増え続け若者が減り続ける構造は変わらないため、今の若年層が高齢化する頃には年金を含む社会保障費の大幅な削減が予想される。

 

若者が受けるコンテ政権の恩恵はそれほど大きくないのだ。

 

 

 

そしてイタリアの若者が置かれている状況は現時点でもかなり厳しい。

 

イタリア全体の失業率は10%ほどだが、若年層の失業率は約30%という高水準だ。(2020年1月時点)

 

もちろんコロナウイルスの流行によってこの数字は確実に悪化する。

 

クオータ100で大量の離職者がでたという話をしたが、残念ながらそれが若者に雇用を作ることはなかった。

 

退職したのは高齢の労働者であり、スキルや経験の面で若者では穴埋めにならなかったようだ。

 

 

 

ここまでの話をまとめると、

 

・イタリアでは少子高齢化が進行している

・若年層の失業率は約30%

・それなのに年金の受給年齢を引き下げる

・その結果、高齢者が大量離職するも若者の失業率は改善せず

・恐らく今の若年層は高齢者になっても重い負担が予想される

 

ということだ。

 

ちなみにイタリアの人口は約6000万人で物価は大都市以外は日本と同じくらいなのだが、年収9万ユーロ(2020年3月23日時点で約1000万円)を超える年金受給者は14万人もいるそうだ。

 

若年層の3人に1人が失業している裏で、税引きしても毎月70万円以上の年金を死ぬまで受け取れる高齢者がいるのだ。

 

 

 

いつの時代もどこの国でも、高齢者と若者が価値観を共有できないのは多くの書物が証明しているが、この状況では世代間の対立が生じることは避けられないだろう。

 

イタリアの世代間闘争は社会保障問題が最大の原因であり、コロナウイルスの感染拡大はそれを表面化させただけなのかもしれない。

 

 

日本の世代間闘争

近年の日本でも高齢世代と若年層の対立が目立つ。

 

あの池袋での事故以来、高齢ドライバーが起こす事故はメディアで盛んに報じられるようになった。

 

高齢者が起こした事故のニュースのコメント欄には高齢者へのヘイトが目立ち、池袋での事件で話題になった「上級国民」という言葉はネットのいたるところで盛んに使われている。

 

 

 

日本で見られる高齢世代へのヘイトも、根底にあるのは若年層の社会保障問題への不安と怒りだ。

 

年金2000万円問題が話題になって以来、「今の若い世代は年金をもらえない」という煽り文句をあちこちのメディアが使った。

 

その結果多くの人が老後のお金の心配をするようになったのは、資産運用系の本が書店に大量に並んでいることからもわかるだろう。

 

僕は「年金がもらえない」という事態までは至らないと考えているが、これからの数十年も高齢者が増え若年層が減るという構造が続く限り、少なくとも受給年齢の引き上げや給付の減額は避けられないのではないかと思う。

 

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もちろん医療費の増大も深刻な問題で、今は保険が適用される医薬品が将来は保険適用外となる可能性は高い。

 

消費税も上がる一方だろう。 

 

 

 

そんな未来が待ち受けていることはもちろん僕たち若年層はわかっていて、中にはどうしようもない不安と怒りを高齢世代にぶつける人がいる。

 

「少子高齢化の波が来ることを分かっていたのにろくな対策をせず、自分たちだけは年金をしっかりもらってぬくぬく老後を過ごしやがって!」という怒りを抱く若年層は少なくないのだ。

 

社会保障問題への不安と怒り、そこに高齢者が起こす様々なトラブルのニュースが合わさることで、「高齢者に苦しめられる若者」という構造が出来上がり、ヘイトが生まれる。

 

これが日本で起きている世代間対立だ。

 

 

コロナが日本の世代間闘争を表面化させる?

日本もイタリア同様、コロナの影響で世代間闘争が表面化する可能性は高い。

 

世代間闘争の土台は出来上がっていて、その対立を過熱させるきっかけがあれば一気に燃え上がるからだ。

 

 

事実はさておき、日本のコロナウイルス感染者数は減少傾向にあると報道されている。

 

大学生の旅行からアーティストのコンサートまで、あらゆるイベントを中止に追い込んだ自粛ムードが感染拡大防止に一定の効果をもたらしたのかもしれない。

 

でもそれが通用するのも3月末までで、4月になれば定期異動や新社会人の研修などで人の移動が活発になり、全国のあらゆる場所にあらゆる場所から人が出入りするようになる。

 

そして無症状の感染者がウイルスを拡散して感染者が爆発的に増えた場合、医療機関は高齢者であふれかえる恐れがある。

 

日本での新型コロナウイルスの脅威はこれから高くなるのだ。

オリンピックなど議論している場合ではない。

 

 

そして若年層には別の問題が待ち受けている。 

 

宿泊業や飲食店が大打撃を受け、航空会社が5000人の社員を休業させる事態になり、日経平均は大暴落した。

 

今後もコロナの影響はあらゆる業界に波及すると考えられ、倒産する会社やリストラに踏み切る企業が続出するだろう。

 

これはベンチャーや中小企業に限らず、どんな大企業にも当てはまる。

 

コロナは高齢者の命を奪い、若年層を経済的に追い込むということだ。

 

 

 

余談だが、日銀や年金がETFを購入することで日経平均を釣り上げていることも世代間闘争の表面化につながると思う。

 

富裕層(≒高齢者)がアベノミクスによる株価上昇の恩恵を受けた一方で、労働者の賃金はほとんど伸びなかった。

 

コロナショックが起きた今、富裕層の資産を守るために年金をジャブジャブ使って株価暴落を緩めている現状が広く認識されれば、若い世代の怒りは収まらないのではないだろうか。

 

<参考書>